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【陸上競技】山縣亮太選手の10秒00。~第65回全日本実業団陸上選手権、男子100m決勝を見た話。

2017年9月24日。全日本実業団選手権。写真は男子110mH決勝。 彼の走りは空気を変えた 2017年9月24日(日)。 ヤンマースタジアム長居。 第65回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会、最終日。 メインスタンドの観客席は、午前中からすでに混んできた。 川見店主とボクが陣取ったのは、フィニッシュライン前7列目のシート。 直線100mを理想的な角度で一望できる。 川見店主: 「思ってたよりもお客さんが多いね。最近の陸上競技界は、注目されてるんだろうね」 場内には、どこかリラックスした空気が漂っている。 社会人の大会ならではの、余裕を感じる。 プログラムを見ると、「ちびっこ陸上教室」「豪華景品お楽しみ抽選会」「注目選手のサイン会」などのイベントが案内されていた。 川見店主: 「観客が楽しめるように、いろんな趣向が凝らされているね。こういう大会が、陸上競技の裾野を広げる良い機会になればいいね」 しかし、競技がはじまると、さすがに真剣勝負の緊張感があった。 一流選手たちの圧倒的なパフォーマンスと迫力に、観客は興奮し感動を覚えた。 中でも、場内の空気を劇的に変えたのは、Y選手だった。 13時10分。 男子100m準決勝に、Y選手は登場した。 川見店主: 「Y選手は、全力で走れるのかな?」 川見店主は、彼の故障を心配していた。 何かのニュースで、不調を聞いていた。 しかし、この日の彼は、惚(ほ)れぼれするような走りを見せた。 スタートから一貫して、寸分の乱れもない完璧なフォームで100mを疾走した。 圧倒的なレース展開、1位でフィニッシュ。 記録は10秒20。 スタンドからは大きな拍手が送られた。 川見店主: 「調子がよさそうでよかったね。あれだけのトップ選手たちの中でも、Y選手の速さは、次元がひとつ違うよね。すごいな」 スタンドに設置された巨大なビジョンに、レースがプレイバックされる。 スローで映しだされたY選手の走りを見ながら、川見店主は、3か月前を思い出していた。 ◆ そこに、彼はいなかった ――3か月前。 川見店主は、この同じ場所で、Y選手が走るのを見ている。 2017年6月24日、日本選手権。 大激戦となった男子100m決勝のレース。 優勝し

【中距離走】800mで大会新記録を樹立した高校1年生が、レースで先頭を走る理由とは?~中距離ランナーりゅうきくんの話(その2)

( その1「800mを1分56秒で走る中学生が、たった3ヶ月で記録を6秒も更新した理由とは?」 のつづきです) なんと予選で大会新記録 2017年8月某日。 京都市西京極陸上競技場。 京都府高校ユース陸上競技大会。 男子1年800m予選のレース。 スタートラインに立つ彼には覚悟があった。 「思いっ切り走ってやろう」 彼の持つ自己ベスト記録は1分56秒91。 出場選手の中で群を抜いている。 予選を突破するのは明らかだった。 決勝に進むことを考えると、このレースは軽く「流して」体力を温存するのが得策なはずだ。 でも、彼はちがった。 「思いっ切り走ってやろう。そして、記録を狙ってやろう」 スタートから、ぶっとばした。 他の選手と接触するのもイヤだった。 第2コーナーを周り、オープンコースになった時には、すでに2位以下を10m程引き離していた。 スタンドで彼を応援する人たちは思った。 おいおい、まだ予選なのに、アイツなんであんなにとばしてるんだ? その差は開く一方だった。 トラックを1周した時は30m、2周目のバックストレートでは50mほど離した。 彼はどこまでいくんだ! 場内は騒然としてきた。 スマホで撮影していたお母さんの手は震えた。 彼は、前だけを向いてひたすら走りつづけた。 圧倒的な走りを見せつけてフィニッシュした。 2位との差はなんと70m程も開いていた。 ざわついた場内にアナウンスが流れる。 1位、○○くんの記録1分56秒10は、大会新記録です――。 「おおーー!」 驚きの歓声と称賛の拍手が湧きおこった。 つづく決勝でも、彼はぶっとばした。 記録1分57秒52。 もちろん、優勝した。 ***** なぜ順位ではなく記録を狙ったのか? 本日のお客様は、高校1年生の中距離選手りゅうきくんです。 ――りゅうきくん、こんにちは。 りゅうきくん: 「こんにちは(ニコニコ)」 ――まずは 京都府高校ユース男子1年800m で 優勝! おめでとうございます! いよっつ! ほんで 大会新記録 も樹立!おめでとうございます! 二連発いよっつ! りゅうきくん: 「ありがとうございます(ニコニコ)」 ――質問です。りゅうきく

【中距離走】800mを1分56秒で走る中学生は、なぜ、たった3カ月で記録を6秒も更新できたのか?~中距離ランナーりゅうきくんの話(その1)

中学3年の春、彼の能力は目覚めた。 彼は中学生になって陸上部に入った。 走ることが好きだ、という「自覚」はあまりなかった。 がんばろうという気持ちも、さほど強いわけではない。 本人にも、お父さんにもお母さんにも、わからなかった。 彼の能力は地中深くにあって、誰の目にも触れなかった。 そのまま、中学校の2年間が過ぎた。 中学3年の春。 時は突然にやってきた。 眠っていた彼の能力は目覚め、大地を蹴破り一気に発芽した。 そして、わずか3か月で、途方もない花を咲かせることになる。 話は、2016年5月1日の出来事からはじる。 ◆ 【2016年5月1日 京都市中学校総体】 彼は男子800m決勝のレースで、これまでにない走りっぷりを見せた。 他の選手たちを大きく引き離して独走し、ぶっちぎりで優勝。 記録は2分02秒40。 この快挙に、彼のチームは大騒ぎになった。 観戦していたお母さんは、驚きやら感動やらで涙が止まらなかった。 お父さんは、これは大変なことになったと思った。 全中(全日本中学校陸上競技選手権)の男子800m出場資格は2分01秒。もう少しがんばったら、息子は全中に出場できるんじゃないか? ならば、とお父さんは思う。 できるかぎりの応援をしてやろう。彼の足に合うシューズを買ってあげよう。 色々調べていると、ある店のブログを見つけた。 そこには、同じく800mで全中に出場を果たした、ある男の子のことが書かれていた。 よし、この店に息子を連れて行こう。 思い立つとすぐ、その店に電話を入れた。 お父さんが読んだ「R太郎くん伝説」↓ ◆ 800m2分切りと全中出場を目指して 【2016年5月12日 オリンピアサンワーズ】 ご両親に連れられて、彼はオリンピアサンワーズにやってきた。 長身で細身、優しい顔をしていた。 川見店主は彼に聞いた。 川見店主: 「800mで2分切りたいよね?全中に行きたいよね?」 彼は、一緒に来た小さな妹の遊び相手をしながら、はい、とこたえた。 川見店主は、その立ち姿を見て、彼のランニングフォームが想像できた。 川見店主: 「今の彼は、きっと下半身だけで走ってます。上半身も使って走れるようになれば、800mで2分を切れると思います」

【マラソン】フルマラソンに挑戦する50代男性ランナーを応援するブログをはじめます!【第1回】

「50s Runners Club」はじめます。 フルマラソンに挑戦する、 50代以上 の 男性ランナー を応援したい! というブログをシリーズではじめます。 名付けて「 50s Runners Club(フィフティーズ・ランナーズ・クラブ) 」。 第1回目は、3人のイカしたオジサマたちがご登場です! ***** 「やっと5時間を切れました」 【熊本県・ヨシユキさんの場合】 中学・高校時代は野球部で汗を流した。 でも、それからはスポーツらしいことは何もしてこなかった。 10年ほど前、突然腰痛に襲われる。 医者に行くと言われた。 運動不足です。カラダを動かしてください。 ジムで汗を流すようになった。 そこで知り合った人に、無理やりマラソン大会に申し込まされた。 2007年、熊本県氷川町梨マラソンに参加。 梨畑を5km走った。 ヨシユキさん: 「しんどかったですね。 死ぬかと思いましたね (笑)」 30分ほどかけてゴールにたどりついた。 参加賞でもらった梨は甘く美味しかった。 走り終わって食べた弁当は格別にウマかった。 帰りに皆で温泉につかり、ビールを飲んだ。 なんだこれは、最高の気分じゃないか。 ヨシユキさん: 「これが やみつきになりましてね 。走りつづけることになりました」 フルマラソンにも挑戦。 ・2014/12 青島(初フル)5時間20分 ・2016/03 鹿児島 5時間15分 しかし、走ると膝が痛むようになってきた。 2016年秋、オリンピアサンワーズに初ご来店。 2足のランニングシューズをフィッテング。 2016年秋。レース用(上)、走りこみ用(下)のランニングシューズをフィッティング。装着したオーダーメイドインソールは、いずれも最上級インソールのゼロ・アムフィット。 その後。 ・2016/11 福岡 5時間30分 ・2016/12 青島 4時間58分(PB) ヨシユキさん: 「 やっと5時間を切れました。もう膝も痛くなりません 」 2017年夏、ふたたびのご来店。 2足のランニングシューズをフィッティング。 2017年夏。走りこみ用(左)とレース用(右)のランニングシューズをフィッティング。装着したオーダーメイドインソールは

【マラソン】月間150kmの練習でフルマラソンを3時間25分で走れるようになった女性ランナーの秘密とは?

眠っていたのは○○な才能だった スポーツは得意ではなかった。 体育祭はいつも憂鬱(ゆううつ)だった。 中学時代は、いわゆる「帰宅部」。 でも高校では空手部に入ることになった。 友人にこんな風に誘われたのだ。 大丈夫、空手は運動神経とか関係ないから。 「入部してわかりました。関係ないわけないじゃん!って(笑)」 せっかく入ったのでつづけてみた。 自分の中に眠る「何か」の才能が花開くかもしれないし。 3年つづけた結果。 「空手の才能は眠ったままか、元々ないのかのどちらかだったみたいです(笑)」 その後もスポーツとは無縁の生活。 しかし、体力がだんだん落ちていくのが気になりだした。 「これからもっと年齢を重ねたら……って将来のことを考えると、元気なおばあちゃんでいたいなって思ったんです」 ならば、今から足腰を鍛えておかなければ。 6年前から少しずつ走りだした。 マラソン大会なるものがあることを知る。 思い切って地方の大会に申し込んだ。 4.5kmのレース。 「それが、あっという間に走り終わって。せっかく遠くまできたのに、走る時間が短いと来た甲斐がないなーと思ったんです」 今度は10kmのレースに出場。 50分程度で走れた。 5年前(2012)、大阪マラソンに申し込んでみたら当選した。 初めて42.195kmを走ることになった。 それがどんな距離なのかは想像できなかった。 ペースも目標タイムも何も設定できなかった。 完走できるかどうかも、もちろんわからない。 だから、自分の思うままに、カラダの動くままに走りつづけてみた。 「大阪マラソンはレース後半で食べ物がたくさん並んでいるエイドがあるでしょう?そこで、めいっぱい食べて(笑)。それが美味しかったし、楽しかったですね」 初フルマラソンは4時間30分で無事に完走。 以降、毎年フルマラソンに挑戦する。 ・2013/10 大阪 3時間59分 ・2014/10 大阪 3時間57分 ・2015/11 淀川 3時間45分 ・2016/02 口熊野 3時間31分 ・2016/10 大阪 3時間28分 ・2017/02 京都 3時間25分(PB) 走る度に記録を更新。 いつの間にかサブ4からサブ3.5ランナーへ。 眠っていたの

【短距離走】100mを日本人初の9秒台で走った選手は、隣のレーンを走っていた。~大学生スプリンターりょうくんの話(その2)

( その1「100mを10秒66で走った彼が、ゆっくり走って見えた理由」 のつづきです) 100mを10秒57で走った 本日のお客様は、大学生スプリンターりょうくんです。 ――りょうくん、こんにちは。おかえりなさい。 りょうくん: 「おひさしぶりです」 ――4年前の奇跡の全国インターハイ出場は、我々の誇りです。 りょうくん: 「ありがとうございます。応援してくれた両親のおかげです。故障なく走ってこれたのは、川見店長(と彼は呼ぶ)がずっと僕のインソールを作ってくれてたおかげです」 ――近畿と全国のインターハイで2回、100mをあの 桐生祥秀 (きりゅう・よしひで)選手と 隣のレーンで勝負 したことは、ご自身にとっても誇りとなる歴史ですね。 りょうくん: 「勝負になってたかどうかは、わかりませんけども(笑)。桐生くんの速さをこの身で体感できたのは貴重な経験でした」 ――近畿インターハイで桐生選手の隣を走るりょうくんの姿は、はからずも色んなメディアを通して日本中の人が目にすることになりましたね。 りょうくん: 「僕は 10秒66 の自己ベスト記録で走ったのに、桐生くんのせいでゆっくり走って見えたっていう(笑)。それに、報道された写真には、僕が必死で走る『変顔』が写されてて、友人たちからはさんざんネタにされたんですから(笑)」 ――それも含めて、りょうくんだけのかけがえのない経験です。 りょうくん: 「そういうことにしときます(笑)」 ――それと、りょうくんの100m自己ベスト記録は、その近畿インターハイ決勝で出した「10秒66」って聞いてましたけど、準決勝は「 10秒57 」で走ってますよね? りょうくん: 「あれは 追風参考記録 (+3m)だったんで」 ――かたいことは言わずに、もう自己ベストは「10秒57」でいいじゃないですか(笑)。 りょうくん: 「いや、あくまでも参考記録ですから(笑)」 ――律儀でいらっしゃる。りょうくんらしいですね(笑)。 ◆ 全日本インカレと日本選手権を目指す りょうくんと川見店主はほぼ一年ぶりの再会。 話は咲きます。 川見店主: 「もう何回生だっけ?」 りょうくん: 「今年の春で3回生になりました」 川見店主: 「東京でのひとり暮