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『Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック・ナンバー)』の取材を受けた時の話。

川見店主は、その雑誌を知らなかった。 取材依頼の電話を受けながら、手元にあったメモ帳に、受話器から聞こえたままの単語を走り書きした。 「なんばスポーツさんってとこがシューズのことで取材に来るらしい」 と川見店主は言った。 え?なんばスポーツ?難波(大阪ミナミの繁華街)にそんなスポーツ店あったっけ?それに、スポーツ店がなんでウチに取材に? ふとメモ帳を見ると、そこには、いかにも片手間な文字で「ナンバ」「スポーツ」そして「本」と書かれていた。 うわ、これ、スポーツ誌の『Number』のことじゃないですか!? 「なにそれ?雑誌?知ってるん?」 2日後。 ライターのW氏は昼過ぎにやってきた。 取材のテーマは、「1964年東京五輪から今日にいたるまでのシューズの進化について」だった。 「ちょっとテーマが壮大すぎるんじゃないですか?」 と言いながら、川見店主は取材に応じた。 店内に保存してある1980年代からの『月刊陸上競技』のバックナンバーや、1990年代からのアシックスのカタログやらを引っ張り出してきて、一緒になってシューズの歴史を遡(さかのぼ)った。 W氏はたくさんの雑誌とカタログに埋もれて調査に没頭した。 取材は5時間にわたった。 冒頭の画像は1997年〜2001年のアシックスのカタログ。 この時代、カタログでは陸上競技のスパイクシューズが一番大きく扱われていた。 今回、川見店主が登場する『Number』の記事は、「マラソンシューズの進化」に焦点を絞って書かれている。 W氏には機会があれば、「陸上競技スパイクシューズの進化」についてもぜひ記事に書いてほしいと思います。 つーわけで、川見店主もちょこっと出てくる陸上競技大特集『スポーツグラフィックナンバー』1030号は、税込640円で絶賛発売中です! 当店ホームページ↓ 陸上競技シューズのインソールをくわしく↓

雑誌『Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック・ナンバー)』に川見店主の記事が掲載されてます。

このたまらなく魅力的な表紙の雑誌は、7月1日発売の『Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック・ナンバー)1030号』。 大特集「走る」。日本最高のランナーは誰だ?ってことで、陸上競技の魅力がギッシリと詰まった読み応えのある一冊になってます。 ページをめくり読みつづけると、あれあれ、オリンピアサンワーズ川見店主が登場してるじゃないですか! 「変わりゆくマラソンシューズ。最先端は足袋から厚底へ」という記事に、川見店主の話が載ってます。 気になる内容は本を手に取って確かめてね! つーわけで、本屋さんへGO!もしくは通販でポチッ! 税込640円で絶賛発売中です! 当店ホームページ↓ 陸上競技シューズのインソールをくわしく↓

本日のインソール~66回目のフルマラソンを完走した78歳女性ランナーのランニングシューズと足袋シューズをフィッティング!

年齢を公表することが失礼になることもある。 しかし、この方の年齢は畏敬の念をもって紹介したい。 Cさん(女性)は78歳。 マラソン歴40年で完走したレースは60本を超える。 Cさんの長年のお悩みは、自分の足に合うランニングシューズが見つからないこと。 40年間、シューズのことは自分なりに模索しながら走りつづけてきた。 そして、オリンピアサンワーズにたどりついた。 今年(2021)1月にご来店。 レース用に爽やかなオレンジ色のランニングシューズをオーダーメイドインソールでフィッティング。 その2ヶ月後、周回コースで行われた42.195kmのレースを5時間30分で走り切った。 これで完走したレースは66本。 「ホントは制限時間を越えてたんだけど最後まで走らせてもらえたの。コロナで大会がなくなって2年ぶりのフルマラソンでした。フィニッシュしたら両脚とも攣(つ)ってしまった。まだまだ練習不足ね」 今回のご来店は、トレーニング用ランニングシューズと、「足を強くする」足袋シューズを、それぞれオーダーメイドインソールでフィッティング。 「あと何回フルマラソンを走れるかわからないけど、だから足のことは大事にしたいと思います」 Cさんのランニング人生、最後までお供させていただきます。 すべての写真は当店インスタグラムでご紹介↓ この投稿をInstagramで見る オリンピアサンワーズ | olympiasunwards(@olympiasunwards)がシェアした投稿 当店ホームページ↓ ランニングシューズのフィッティングをくわしく↓

強い足をつくる足袋シューズとインソールをフィッティングしましょう!

あなたがうまく歩けないのは、速く走れないのは、主に「 かかと 」に体重をかけて動く「 後ろ重心 」だからかもしれません。 目指すのは「 足指 」で地面をしっかり踏みしめる「 前重心 」の動き。 「足指」を動かすTABIシューズと、「足裏」を支えるオーダーメイドのインソールで、「前重心」の歩き方・走り方を自然と身に付けましょう! あなたの歩き方、走り方がどんどんよくなりますよ! お求めはオリンピアサンワーズで。 特別サイトはこちら↓ http://www.ne.jp/asahi/olympia/sunwards/tabiandinsole.html 当店ホームページ↓

本日のインソール~フルマラソンを3時間36分で走る三重県からお越しの男性ランナーのランニングシューズをフィッティング!

三重県からお越しのマサトさん。 学生時代は陸上競技部で短距離選手だった。 社会人になってからのランニング歴は20年。 その同じだけの年数をオリンピアサンワーズでシューズをフィッティングされている。 フルマラソンの自己ベスト記録は3時間36分とサブ3.5に迫る。 2年前、マサトさんから「大きな手術を受ける」と聞いた。 そして今回、お元気な顔でご来店された。 つまり、マサトさんは走りつづけるということだ。 タイプの違う2足のランニングシューズをオーダーメイドインソールでフィッティング。 これでマサトさんにフィッティングしたシューズは通算で19足となった。 「マラソン大会が無いのは残念です。でも、走るのはそれだけのためではないですから」 と笑うマサトさんの視線は力強かった。 すべての写真は当店インスタグラムでご紹介↓ この投稿をInstagramで見る オリンピアサンワーズ | olympiasunwards(@olympiasunwards)がシェアした投稿 当店ホームページ↓ ランニングシューズのフィッティングをくわしく↓

本日のインソール~フルマラソンに挑戦する男性ランナーのランニングシューズをフィッティング!

  学生時代は短距離選手だったMさん。2007年の世界陸上大阪大会は、競技場近くのホテルに泊まり、観戦に通い詰めるほど陸上競技が好き。 マラソンをはじめたのは2006年。初フルマラソンは5時間で完走。オリンピアサンワーズとはその時以来のお付き合い。 途中、バドミントンをしててアキレス腱を断絶するなどのトラブルを乗り越えつつもランニングを継続。 今回は3年ぶりのご来店。タイプの違う2足のランニングシューズをオーダーメイドインソールでフィッティング。これでMさんのシューズのフィッティングは通算で14足目。シューズに足を入れると 「あー、新しいインソールは、やっぱりいいですね!また明日からがんばれそうです!」 と笑顔のMさんでした。 写真のすべては当店インスタグラムでご紹介↓ この投稿をInstagramで見る オリンピアサンワーズ | olympiasunwards(@olympiasunwards)がシェアした投稿 当店ホームページ↓ ランニングシューズのフィッティングをくわしく↓

本日のインソール~岐阜県からお越しの男性ランナーのランニングシューズをフィッティング!

ランニングシューズのオーダーメイド・インソールを作成する川見店主 Rさんは2年前からランニングをはじめたけども、両足の外側が炎症を起こし痛くて走れなくなった。 「インソールでその悩みを解決できるかも」との望みを胸に1年前にオリンピアサンワーズへ初ご来店。ランニングシューズをオーダーメイドインソールでフィッティングすると足の痛みはすぐに無くなり走れるようになった。 「おかげさまでランニングが快適になりました。もう1足同じものを用意して、仕事中でも履きたいです」 ってことで、現在お住まいの岐阜県からはるばるのご来店。 「仕事用なので地味な色で」というRさんのリクエストでブラックのランニングシューズをフィッティング。 Rさん、またのご来店をお待ちしておりまーす! 写真のすべては当店のインスタグラムでご紹介↓ この投稿をInstagramで見る オリンピアサンワーズ | olympiasunwards(@olympiasunwards)がシェアした投稿 当店ホームページ↓ ランニングシューズのフィッティングをくわしく↓

本日のインソール~外反母趾でお悩みの母と、中学生で野球部の息子さんのランニングシューズをフィッティング!

ランニングシューズのオーダーメイド・インソールを作成する川見店主   Kさん親子のご来店。 学校の先生をされてる母のトミコさんは外反母趾で、毎日足は痛いし体も疲れるのがお悩み。 息子さんのワタルくんは育ち盛りの中学生で野球部に所属。 「息子にはツライ外反母趾になってほしくない。今から足を大切にスポーツに励んでほしい」 とはお母さんの親心。 おふたりにはそれぞれランニングシューズをオーダーメイドインソールでフィッティング。 「すごいフィット感。明日からふたり一緒に走ろうか!」 と笑顔のKさん親子でした。 またのご来店をお待ちしておりますまーす! 写真のすべては当店インスタグラムで↓ この投稿をInstagramで見る オリンピアサンワーズ | olympiasunwards(@olympiasunwards)がシェアした投稿 当店ホームページ↓ ランニングシューズのフィッティングをくわしく↓

本日のインソール~北海道からはるばるお越しの女性にランニングシューズを2足フィッティング!

ランニングシューズのオーダーメイド・インソールを作成する川見店主 北海道(!)からはるばるお越しのアユミさん。スキー、空手、バスケ、トライアスロンとなんでも挑戦されます。 「人生100年時代を生きるために、今から全身を整えておきたい。だから、自分に合うシューズが必要だと思います」 という理由で今回が初ご来店。 2足のランニングシューズをオーダーメイドインソールでフィッティング。 アユミさん、その後いかがお過ごしでしょうか? またのご来店をお待ちしておりまーす! 画像のすべては当店インスタグラムで↓ この投稿をInstagramで見る オリンピアサンワーズ | olympiasunwards(@olympiasunwards)がシェアした投稿

【マラソン】川見店主が大阪マラソン2019を応援した話を残しておいてもよかろう。

大阪マラソン大会HPより 川見店主、今年も大阪マラソンを応援する 去る2019年12月1日(日)、第9回大阪マラソンが開催されました。 今年も沿道で3万人のランナーを応援した川見店主に、大会の模様を聞いてみます。 川見店主 ――:川見店主、こんにちは。 川見: はい、こんにちは。 ――:大阪マラソンの応援、おつかれさまでした。 川見: はい。晴天に恵まれて、よかったです。 ――:大阪マラソンといえば、昨年度(2018)まではオリンピアサンワーズ前を通る幹線道路・通称「 玉造筋(たまつくりすじ) 」がコースになっていました。当店は大阪城のスタートから約3.2km程に位置しており、我々は店の前の沿道に立って、走り過ぎるランナーのみなさんを応援していました。 川見: 出場されている当店のお客様とハイタッチするのが毎年の楽しみでしたね! 大阪マラソン2018の風景 ――:しかし、今大会からは新コースに変更され、当店前の玉造筋はコースから外れました。 川見: ちょっと残念ですね。だから今年は、店に一番近い交差点「 下味原 (しもあじはら) 」で応援することにしましたよ。 下味原の交差点でランナーを待つ ――:下味原の交差点は、 30km地点 のちょい手前に位置してます。 川見: 私が到着した午前10時30分頃。周辺の沿道はたくさんの人でごった返してました。みんなチームの幟(のぼり)を立てたり、うちわを振ったり、ランナーへの応援で沸いてました。 ――:へー、そんなに混雑してたんですね。 川見: この交差点には、地下鉄千日前線「鶴橋」駅に通じる階段があります。電車で移動しながらランナーを追っかけて応援する人たちにとっても便利な場所ですね。 ――:コースはここで左折し南下、30km地点を通過します。 川見: ランナーのみなさんも疲れが見える頃だから、沿道の応援にもいっそうの熱と力が入っていましたよ。 「がんばれーー!」 下味原交差点で (撮影・川見店主) ★ 川見店主が見たすごい光景とは? ――:3万人のランナーが走るわけですから、大阪市内の交通規制も大変ですね。 川見: メインの大通りの交通を長時間に渡り遮断するのですから、地域の理解と協力が必要です。

【マラソン】彼女は未知の世界へ走りだした~先天性内反足で足首の自由を失った女性がフルマラソンに挑戦した話(その3)

彼女は、京都の景色をほとんど覚えていないという。 「次の関門に間に合うように、そしてまた、その次の関門に間に合うように。それだけを思って、ひたすら足を前に運んでましたから」 先天性内反足で足首の自由を失った女性が、はじめてのフルマラソンに挑む。 第1話「彼女はもう一度走りたかった」 第2話「彼女は決意の一歩を踏み出した」 のつづきです。 ◆ 未知の世界へ 2019年2月17日。 京都マラソン。 朝の太陽は、雲間から時折に顔を出したが、寒さをやわらげてはくれなかった。 気温0度。 号砲を待つ1万6千人の群衆。 その中に、彼女はいた。 空気は澄んでひんやりと冷たい。 吐く息は白かった。 彼女は小刻みに体を動かした。 歩き方を変え、なんとか走れるようになってわずか4か月間。 とうとう、フルマラソンのスタートラインに立ってしまった。 これから走る距離のことを考えると、もちろん、不安はある。 でも、ここまできたら、もう走るしかない、と彼女は思った。 足元を見つめる。 フラッシュイエローのランニングシューズ。 この4か月間をともに歩き、走ってきた相棒。 お願い、今日も一緒にがんばってね、とシューズに声をかけた。 午前9時。 レースがスタートした。 前方から徐々に人々の波が動きはじめる。 やがて、そのうねりが目の前に迫ってきた。 彼女は、ついに一歩目を踏み出した。 その瞬間。 確かに聞いた。 自分の中で、何かが切り替わる音。 鳥肌が立ち、胸が高鳴った。 未知の世界へと、彼女は走りだした。 ◆ 彼女の背中を押したもの 足裏の感覚。 土踏まずを支えるオーダーメイドインソールが心地よい。 足元の安定感。 シューズが勝手に、体を前へ前へと運んでいく。 周囲の雰囲気にも押され、おのずとペースも上がっていく。 しばらくして坂をのぼりきると、ふいに視界が開けた。 眼下に広がる光景。 無数のランナーたちで埋め尽くされた道が、はるか先まで、うねうねと揺れている。 うわぁと声をあげそうになる。 こんなにたくさんの人が走ってるんだ! 圧倒されて、我にかえった。 時計を確認する。 最初の5km、想定より3分も速かった。 あとまだ37kmもある。

【マラソン】彼女は決意の一歩を踏み出した~先天性内反足で足首の自由を失った女性がフルマラソンに挑戦した話(その2)

( 第1話「彼女はもう一度走りたかった」 のつづきです) ひとりの女性が店の扉を開けた。 店内に歩き進む、そのわずか数歩。 川見店主は見逃さなかった。 歩き方。 体が右側に傾いた。 一歩一歩に腰が回り左右に揺れる。 足首が不安定に内側へとねじれこむ。 ◆ 川見店主が迫られた選択 2018年10月某日。 彼女ははじめてオリンピアサンワーズにやって来た。 フルマラソンを走りたいです、と彼女は言った。 そして、生い立ちを語った。 生まれた時のこと、幼い頃の手術、動かぬ右の足首、それでも走ることが好きだったこと、陸上競技での挫折、今もずっと悩まされる腰や股関節の痛み……。 川見店主は、彼女の体と向き合った。 筋肉のつき方がちがう、別人のような右脚と左脚。 かたちも大きさも、まったく異なる右足と左足。 そして、彼女の歩き方――。 川見店主は、彼女が乗り越えてきたであろう、多くの苦労を思った。 だからこそ「走りたい」という彼女の気持ちも、よくわかる気がした。 しかし、彼女の体には歩くだけでも相当の負担がかかっているはずだ。 まして、走る時に被(こうむ)るダメージの大きさは想像もつかない。 この体のままで、42.195kmもの距離を走り抜くのは、到底不可能だ。 川見店主は、自身に責任を問うた。 第一に守るべきは、彼女の「体」だ。 大切にすべきは、日常であり生活だ。 無理をし、体を傷めてまでフルマラソンに挑戦することを、美談にしてはならない。 しかし、こうも思った。 彼女の「心」もまた、大切にしてあげたい。 彼女の「不可能」を「可能」にしたい。 それが、彼女の人生を切り拓くことになるのならば――。 川見店主は決断を迫られた。 選択肢は2つしかなかった。 ひとつ、彼女にフルマラソンをあきらめさせる。 ふたつ、なんとしても無傷で彼女を完走させる。 大会まで、わずか4か月。 遠慮してはいられなかった。 言い放った。 「フルマラソンを走るのは無理です。危険です。やめるべきです」 ◆ 彼女に求めた「2つ」の挑戦 川見店主の言葉に、彼女は、深くうなづいた。 川見店主はつづけた。 「それでも走りたいのですよね?」 彼女は、もう一度、うなづいた。 「ならば、歩き方

【マラソン】彼女はもう一度走りたかった~先天性内反足で足首の自由を失った女性がフルマラソンに挑戦した話(その1)

川見店主は、その人を抱きしめた。 そして、両腕をつかんで体を離すと、その人の顔を見つめて言った。 「よくがんばりましたね」 その人はこたえた。 「ありがとうございます。無事に帰ってきました」 川見店主は、その人を、もう一度、強く抱きしめた。 ◆ 彼女が背負ったもの お腹の子は、中から強く、何度も何度も、蹴ってきた。 お母さんは、元気な子が生まれてくるだろうと思った。 町の助産院で、彼女は生まれた。 彼女をとりあげた助産師さんは、彼女の足を見て、声をあげそうになった。 その足が誰にも見えないように、小さな体を、そっとタオルで包みこんだ。 そして、お母さんに優しく声をかけた。 「元気な女の子ですよ」 お母さんは、生まれたばかりの小さな命を愛おしく見つめた。 2日後、彼女は大学病院へと運ばれた。 彼女の右足は、足首から先が大きく内側に曲がっていた。 足の親指が、脛(すね)にくっついていた。 精密検査が必要だった。 冷たく大きな検査装置の中に、ひとり寝かされた。 お父さんは、胸を締めつけられながら、ガラス越しに小さな命を見守った。 「先天性内反足」 それが、彼女がこれからの長い人生に背負っていくことになる病名だった。 医師は言った。 「でも、この子は大丈夫です。こんな言い方は間違っているかもしれませんが、この子の足には、必要な″部品″が全部そろっています。だから、大丈夫です」 ◆ 走ることが好きだった 生後2か月の時と、4歳の時と、彼女は大きな手術を2回受けた。 ある日、おじいちゃんが病院へ見舞いに行った。 可愛い孫の姿は病室にはなかった。 おじいちゃんが彼女の居場所を尋ねると、看護師さんが笑ってこたえた。 「廊下にキズが見えますよね?Eちゃんが足に装具を付けたまま元気に歩きまわるので、キズがつくのです。あのキズをたどっていけば、Eちゃんに会えますよ」 彼女の右足は、足先から太ももまでを装具で固定された。 でも、彼女は不自由を感じることはなかった。 自分にとっては、生まれながらの自分の足だった。 幼稚園にあがるまでは、装具を付けたままで周りの友達と同じように、いや、それ以上に元気に遊びまわった。 お母さんも、決して彼女を特別扱いしなかった

【ハリマヤ】あの日の少年は今も走りつづけている。~A先生のハリマヤのカタログの話。

1970年代のハリマヤのカタログ 「あの日が、僕のランナーとしてのはじまりです」 そう言って、A先生は、古びた二つ折りの紙をカバンから取り出した。 見開きB4サイズのカタログ。 表紙には「 ハリマヤのカナグリマラソンシューズ 」の文字。 中を開くと、見たこともないシューズの写真が並んでいる。 印刷はところどころが剥げている。 端々はちぎれて破損している。 継ぎはぎをしたセロテープも劣化して変色し、このカタログが越してきた年月を物語っていた。 ◆ 少年は日が暮れるまで走りつづけた。 少年は、走ることが好きだった。 体は大きくはなかったが、足には自信があった。 中学生になると陸上部に入部した。 毎日、日が暮れるまで走りつづけた。 ある日、少年の姿を見ていた先輩が、こんなことを教えてくれた。 「それだけがんばってるんだから、そろそろ本格的なランニングシューズで走った方がいい。大阪の天王寺区に陸上競技の専門店がある。その店に行けば、キミに合ったランニングシューズを選んでくれるよ」 ただし、とその先輩は付け加えた。 「その店のおばちゃんはめちゃめちゃコワいぞ。店に入るときに挨拶をしないと中に入れてくれないぞ。挨拶するのを忘れて、玄関で帰らされたヤツもいるんだ。礼儀正しく、失礼のないようにするんだぞ」 先輩は、その店までの地図と紹介状を書いてくれた。 ◆ 「アンタにはそのクツやな」 少年は、電車を乗り継いで店に向かった。 国鉄大阪環状線の桃谷駅で下車した。 先輩からもらった地図と紹介状を握りしめていた。 見慣れぬ町を、緊張しながら歩いた。 しばらくすると、地図に書いてあるとおりの場所にたどりついた。 建物の1階にあるその店には、看板がなかった。 どこから入っていいのかもわからなかった。 およそ、スポーツ店には見えなかった。 とにかく、目の前の引き戸を思い切って開けてみた。 1960年頃から1991年まで営業した桃谷駅近くの店舗 「こんにちは!失礼します!」 大きな声で挨拶をした。 店にたどり着くまでの道中で、頭の中で何回も練習したとおり、深々とお辞儀をするのも忘れなかった。 狭い店の真ん中には古い木の机が置いてあり、その向こうに、メガネをかけたおばちゃんがひと